人生経験豊かなおばあちゃんが誘うハーブ世界
ハーブとおばあちゃんが出てくるお話って、なぜかワクワクします。
おばあちゃんは植物とうまく共同生活ができていて、その方法を教えてくれるからでしょうか。
ハーブというと、ヨーロッパでは魔女が連想されるようです。そして魔女、というと昔は黒い服と黒い帽子のおばあちゃん魔女が、挿絵としてよく登場したものです。
おばあちゃんはいろんな知恵と経験を持ち、ハーブを使って魔法使いのように生活を豊かにしてくれます。それが癒しや魔女的な生活を想像させるのかもしれません。
今回は、そんな人生の達人であるおばあちゃんが登場するハーブ小説や絵本をご紹介します。
秋の夜長にハーブティーを飲みながら、読んでみてはいかがでしょうか。
憧れの、田舎のハーブ生活『西の魔女が死んだ』
ハーブ好きならご存じの方も多いと思います。
梨木香歩さんが書かれた「西の魔女が死んだ」は、以前映画になったり、読書感想文の課題図書にも選ばれた本で、とても読みやすい物語です。でもちょっと考えさせられるような深いテーマもあって、大人でも読みごたえがあり、舞台は日本ですが洋風の田舎暮らしを思わせる素敵なシーンもちりばめられています。
主人公の少女”まい”は友達と馴染めず中学校に通えなくなったため、お母さんは自分の母である、まいのおばあちゃんに、まいを預けることにします。おばあちゃんは田舎で独り暮らしをしているのですが、実はイギリス出身で、なんと魔女の血を引いているというのです。
謎めいたおばあちゃんの、ハーブを使った暮らしぶりはとても素敵。
ハーブ料理やハーブティーを作ったり、家の掃除や洗濯にもさりげなくハーブを利用したりと、真似したいハーブ使いがたくさん紹介されています。まいも大好きなおばあちゃんのようになりたい、と魔女になる修行を始めます。
まいとおばあちゃんは「死」についても語り合うようになります。「死んだら何もなくなる」と怖がるまいに、おばあちゃんは「身体はなくなっても魂は生き続ける」と教えてくれるのでした。しかしある時、まいがどうしても好きになれない近所の強面の男とのことで、まいとおばあちゃんの感情がすれ違い、関係がぎくしゃくするように…。
思春期ゆえか、自分の心をコントロールしたり、自分のことを決められず自信が持てないまいに、おばあちゃんは「魔女修行」と称して、大人になるための課題を与えます。
優しくてきりっとして、ちょっと厳しい面もあるけどチャーミングなおばあちゃん。孤独感を漂わせながらも、信念を持つかっこいい女性として描かれています。
ハーブショップで成長する少女のお話『サラと魔女とハーブの庭』
「サラと魔女とハーブの庭」は七月隆文さんの作品です。
七月さんは「僕は明日、昨日のきみとデートする」という小説でも知られていて、こちらもとても読みやすい小説です。
ただ「西の魔女が死んだ」を読んだことのある人は、ちょっとびっくりするかも。というのは、少女由花の身の上や、おばあちゃんは外国人と魔女の血を引く人など、設定が「西の魔女…」にそっくりなのです。
「え？この後、どのように展開するんだろう？」と最初はドキドキしますが、話の展開はまったく違うので、ご安心を。
おばあちゃんは田舎で、ネットでも評判のハーブショップを経営しています。
そして「サラ」という主人公の想像上の友達が登場するのですが、サラは由花の親友というだけではなく、「もう一人の自分」でもあります。他人には聞かれることのないサラとの会話を通して、由花は自分自身を見つめていくのです。
おばあちゃんのハーブショップには毎日のようにお客さんが訪れます。由花は店を切り盛りするおばあちゃんの姿に憧れて、「おばあちゃんの後を継ぎたい」とお店を手伝うようになります。
おばあちゃんはお客さんを迎えるためにウエルカムティーを用意したり、おもてなしをするのですが、ハーブショップならではの具体的な作業の様子も描かれ、読んでいてワクワクします。
由花はハーブショップでさまざまな人と出会い、経験を積み重ねます。そして今まで自分の考えをあまり持てなかった由花が、最後は自分で判断して、自分の行く道を決めます。そこにはいくつかの別れがありますが、それでも短い期間で成長する由花には明るい未来が見えるのです。
「西の魔女が死んだ」も「サラと魔女とハーブの庭」も、思春期の少女が自分を探す物語です。
その中で、行き詰った少女たちの心を解きほぐすモチーフとしてハーブが描かれているのは偶然ではないでしょう。また少女たちの成長を手助けする二人のおばあちゃんの、ちょっとした違いなども、読み比べてみるとおもしろいかもしれません。
イラストで楽しむ、数々のハーブたち『ハーブをたのしむ絵本』
３冊目は大野八生さんの「ハーブをたのしむ絵本」です。
近所の女の子が興味津々にのぞくおばあちゃんの庭にはハーブがいっぱい。
おばあちゃんは、いろんな種類のハーブについて教えてくれます。そしてお家の中でさまざまなハーブの使い方を教えてくれたり、ハーブティーやハーブ料理を作ってくれたり、またハーブの育て方も教えてくれます。
絵本なので、見ているだけで癒されたり「おいしそう！」「私も作ってみたい！」という気分になります。大野さんのイラストは、とてもほっこりする優しさが感じられるのです。
私もおばあちゃんになったら、こんなふうに孫にハーブのことをお話ししたいな、と思います。
（こんなにいろんなハーブ料理を作る自信はありませんが…(笑)。）
今回ご紹介したお話の舞台はいずれも田舎の一軒家ですが、たとえば都会に住んでいても、マンションの上階に住んでいても、ハーブを楽しもうという気持ちがあれば、おばあちゃんたちのような豊かな生活を送ることはできると思います。
手始めにハーブショップでハーブティーを買ってお茶を淹れたり（その際はぜひ当店で（笑））、ベランダやキッチンで小さなハーブの苗を育ててみてください。
そこから「素敵なハーブとの生活」がはじまるのです。
私も「素敵なハーブ使いのおばあちゃん」をめざして、ハーブティーブレンドの技と人生経験をもっと磨いていきたいと思います！（ニコッ）
